人倫の大本

光仁の御世より眞言・天台のさかりになることを聊(いささか)しるし侍るにつきて、大方の宗々傳來のおもむきを載たり。極てあやまりおほく侍らん、但(ただし)君としてはいづれの宗をも大槪しろしめして捨てられざらんことぞ國家攘災の御はかりことなるべき。菩薩・大士もつかさどる宗あり。我朝の神明をとりわき擁護し給教あり。一宗に志ある人餘宗をそしりいやしむ、大いなるあやまり也。人の機根もしなじな(後半は繰り返し記号)なれば教法も無盡なり。況(いはんや)わが信ずる宗をだにあきらめずして、いまだしらざる教をそしらむ、極めたる罪業にや。われは此宗に歸すれども、人は彼宗に心ざす。共に随分の益あるべし。是皆今生一世の値遇にあらず。國の主ともなり、輔政の人ともなりなば、諸教をすてず、機をもらさずして得益のひろからんことを思給べき也。

且(かつ)は佛教にかぎらず、儒・道の二教乃至もろもろの道、いやしき藝までもおこし用ゐるを聖代と云べきなり。凡(おほよそ)男夫は稼穡(かしょく)をつとめてをのれも食し、人にもあたへて飢ざらしめ、女子は紡績をこととしてみづからもき、人をしてあたヽかにならしむ。賤きに似たれども人倫の大本也。(岩波書店『神皇正統記 増鏡』岩佐正校注=國學院大學所藏本<猪熊信男氏旧藏本>を忠実に再現=昭和40年2月5日第一刷、P115~116、平假名部分は原片假名、括弧内は筆者の付記)

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